愛についての寓話

 娘は、青年を愛していた。

 娘は青年を世界一愛していたので、彼のために世界一の美しさを手に入れた。

 

 そして娘は、青年に告白した。

 「君の爪が嫌いだ。長く伸びすぎて、触れたら痛そうだから」

 娘は、青年のために爪を切った。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の髪が嫌いだ。あまりに豊かで、巻きつかれそうだから」

 娘は、青年のために髪を切った。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の服が嫌いだ。君の美しさを、邪魔しているだけだから」

 娘は、青年のために服を捨てた。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の指が嫌いだ。細長くて、僕の心を掴んでしまいそうだから」

 娘は、青年のために指を切った。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の脚が嫌いだ。長くて、今にも僕から逃げ出しそうだから」

 娘は、青年のために脚を切った。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の腕が嫌いだ。抱きしめられると、逃げられなくなりそうだから」

 娘は、青年のために腕を切った。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の胸が嫌いだ。柔らかくて、うっかり触れてしまいそうになるから」

 娘は、青年のために胸を落した。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の股が嫌いだ。どうしても、僕を卑猥な気持ちにしてしまうから」

 娘は、青年のために股を縫った。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の眼が嫌いだ。美しすぎて、吸い込まれそうになるから」

 娘は、青年のために眼を潰した。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の口が嫌いだ。その言葉が、僕を溶かしそうになるから」

 娘は、青年のために口を縫った。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 「君の耳が嫌いだ。僕の言葉を、いつも受け入れてしまうから」

 娘は、青年のために耳を切った。

 

 そして娘は、また青年に告白した。

 何もない身体に丸い頭がついているだけの娘を、青年はようやく抱きしめた。

 そして、自分の愛を告げるすべがないことを悲しんだ。

'95/02/03
nuts/相生浩史

相生のページへ戻る

トップへ戻る