ゴシック・ブレイク

 職も家もなくして、公園で寝泊まりするようになってから、もう半年が過ぎた。夜でも寒くない季節になったのはいいが、自分が汗臭くてしょうがない。だがもちろん、着替えを買う金なんかない。公衆トイレの洗面所で丸裸になって下着を洗うぐらいしかすることがない。

 馴れてしまえば、悪い生活ではない。ただ、世の中がわけもなく憎くてしかたない。

 まぶしすぎる陽射しの中で、ぼんやりと人々を眺めてみる。もう日付の感覚もなくなってしまったが、どうやら休日らしく、明るい服装の家族連れや若者がベンチや芝生でくつろいでいる。

 その中で、二人の女が目についた。ちょっと暑いぐらいの日なのに、この明るい公園で、二人だけが真っ黒な服を着ている。ただの黒服ではなく、裾の広がったスカートに白いフリルを何段も重ね、さらにリボンを何本もあしらった、奇妙な服装だ。濃い化粧と結い上げた髪に、おかしな形の帽子をかぶり、裾に隠れる長い靴下とやはり黒のパンプスを履いている。

 ゴスロリというやつだろうか。

 あれで、結構な値段がするんだろうな。若い娘に手が出るような金額なのか。どうせ馬鹿親が買ってやったんだろう。それだけの金が俺にあれば、何箇月生活できるか……。

 なんだか、無性に腹が立ってきた。

 二人は楽しそうに、ポーズをつけながら、お互いの姿を写真に収めている。やがてそれに飽きたのか、芝生に座ってペットボトルを飲み始めた。

 俺は、彼女たちの背後からこっそり近づいていった。手には、大事な生活道具であるガムテープを用意してある。貴重品だが、かまうものか。

 二人は正面を向いたまま、なにやら喋りあっていて、背後の俺に気づかない。いい案配だ。

 ぎりぎりまで近づいたところで、ようやく二人は異常を感じて振り向いた。

「えっ。なに」

「なんだ貴様はっ」

 目ん玉を円くして尋ねる質問に、もちろん俺は答えない。その代わり、両の拳で二人それぞれのみぞおちを、思い切り殴りつけた。

 うずくまる娘たちを両腕で受け止め、そのまま抱え上げて、近くの茂みの陰に放り込む。

 驚くほど簡単に手に入った二人は、驚くほど体が軽かった。フリルで嵩張って見えただけで、体は細いんだろう。

 誰も騒がない。目撃はされなかったようだ。ただ、地面に転がされ苦痛にうめく二人の視線が、俺を見上げている。

 スカートの裾が乱れ、生の太腿が覗いている。それも、驚くほど細い。やっと俺は気づいた。化粧にごまかされていたが、若い娘というより、子供なんじゃないだろうか。中学生か、最近のガキは発育がいいから、もしかすると小学生なのかもしれない。

 改めて、怒りがこみあげてくる。

 どうしてやろうか、と思ったとき、生理的欲求が沸いてきた。それで、二人の運命は決まった。

 チャックを下ろし、臭いパンツを掻き分けて、恥垢まみれのチンポを取り出す。それは、みるみるうちに勃起していった。

「いやあっ」

「なにすんの……貴様、なにをするか! そのような、汚らわしい」

 一人はふつうに悲鳴を上げたが、もう一人はわけのわからない口調で抗議してきた。

「このような……許されると思ってか!」

 なんとか起きあがろうとする生意気な方を、俺はものも言わず蹴り倒した。もう一人は、がくがく震えながら、つぶやくように漏らした。

「なにを……なに」

 俺がチンポを出したことで、なにをされるか想像したのだろう。ますます、勃起が強くなってきた。

 もっと、いいことをしてやるよ。

 にやりと笑ってみせてから、俺はゆっくりとチンポに手を添え、目標を定めた。

「貴様っ、まさか」

「いやあああっ」

 寝転ばされたまま寄り添い、身動きもできない二人の顔に、最初のしぶきが命中した。

 さらに悲鳴を上げようとする口の中にも、浮浪者の小便が流れ込む。

 硬直した少女たちの結った髪から高価な服、裸の太腿まで、俺はまんべんなく尿を浴びせ続けた。いくらでも出てきそうな気がしたが、やはり終わりは来る。最後の勢いで、もう一度ガキどもの顔と口にひっかけてやる。

 少女たちはもう身じろぎもせず、その目は宙を見上げている。二人の体から、湯気が上がり、香ばしいような匂いが立ち上ってくる。

 ようやく異変に気づいたのか、周囲に人の気配が集まってきた。俺は逮捕されるだろう。どんな罰になるのかわからないが、この一瞬と引き替えにする価値はあった。

 小便をしただけなのに、射精以上の絶頂が、俺の腰から背中を駆け抜けていた。

2012/03/21 - 2011/04/01
安東熱志

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