君のつばきに恋してる

 僕は中二だから、二つ下の女の子に恋をしても、変態じゃない。
 下校時だ。隣の小学校から帰宅する、千明さんの後をつけてみる。別に何をする分けじゃない、ただ少しでも、彼女の近くにいたいだけだ。
 赤いランドセルの下、デニムに包まれた小さな、未発達のお尻。あのお尻の下に敷かれてみたい。
「あの担任、ほんとエロだよねー。今日も千影の胸ばっか見て」
 そう言いながら千明さんは、地面に唾を吐いた。それが彼女の癖なのは、もう何度も見て知っている。
 ああ、あの地面に落ちた唾を舐めたい。人目がなければやっていたかもしれない。
「その癖やめなよ、千明ちゃん。それに、私は別に、気にしないし……」
 隣を歩く千影ちゃんが、千明さんをいさめた。二人は双子の姉妹で、同じクラスだ。
 双子といっても、驚くほど似ていない。二卵性なのはもちろん、姉妹としてもこんなに似ていないのは珍しいぐらいだ。やや三白眼気味の釣り目でいつも悪戯そうな笑みを浮かべ、明るい髪をツインテールにした千明さんと、垂れ気味の眼をいつも伏せて無口な、黒髪をロングヘアにしてカチューシャで止めている千影ちゃん。背丈は、二人ともよく成長している方だが、妹である千影ちゃんの方がわずかに高い。胸は、べつにどうでもいいんだけど、千明さんはまったくないのに対して、千影ちゃんはたわたわ揺れるぐらいはある。
 共通点を探すなら、どちらも可愛いことぐらいだろうか。もちろん、千明さんの方が百万倍可愛くて素敵だけれど。
 なんで僕は、千明さんを好きになったんだろう。小学校でもいちばん目立つ美少女なのは間違いないけれど、それだけなら千影ちゃんだってよかったはずだ。きっと、僕の魂が千明さんに惹かれたんだと思う。
 そんなことを考えていたら、いつのまにか二人の姿が消えていた。戸惑い、焦ったが、すぐに、道路脇の空き地に入ったのだろうと見当がついた。空き地は私道の奥で、入り込んでしまうと道路からはまったく見えなくなる。
 僕はおそるおそる私道に入り込み、角からそっと空き地を覗き込んだ。
 雑草が生い茂る中に、千明さんと千影ちゃんが、こちらを向いて立っている。
 目が合ってしまった。
「出てきなよ、ストーカー」
 千明さんが、言う。僕はストーカーじゃないけど、出ていくしかなかった。
「なんのつもり?」
 憎々しげな千明さんの言葉に対し、僕は返事に詰まった。とりあえず、主張してみる。
「僕は――ストーカーじゃ、ない」
「小学生の後つけてたらストーカーでしょう! この、ロリコン! ヘンシツシャ!」
「二つしか違わないんだから、ロリコンとか変質者ってわけじゃ」
「後つけてたらストーカーなの! ヘンタイ!」
 ぽんぽんと言われるたびに、僕の心のどこかがびぐびくと反応する。
「千明ちゃん、やめなよ……」
 ようやく千影ちゃんが、千明ちゃんを止めてくれた。この娘は優しいのかもしれない。そこが、物足りなくもあるんだけれど。
「なんで止めるのよぉ」
「ストーカーにあんまり変なこと言うと、逆ギレしてくるかも……」
 ぜんぜん、優しくなんかない。
「ふん」
 ぺっ、と唾を吐いて、千明さんはまた僕を睨んだ。
「こーんなのねえ、ぜぇんぜんこわくなんかないんだから」
「ちょ。どうするの……」
「こうして」
 千明さんが僕に近づいてきた。五十センチぐらいの距離に近づいてくる。
 こんなに彼女と近づいたのは初めてだ。僕は、張りつめた彼女の気配に包まれて、幸せを味わっていた。
「こうすんのよっ」
 そしてついに、二人の身体が触れ合った。
 思いっきり腿を上げた千明さんの膝が、僕の股間に命中したのだ。
 男ならたまらない。僕は、もんどりうってその場に斃れた。きんたまは無事だったが、なぜか勃起していたちんこを直撃されたのだ。折れそうな痛みに耐えられない。
「ちょっと、千明ちゃ……」
「ふん。ざまあ」
 また吐かれた唾が、地面に横たわる僕の顔に命中する。
 押さえていた股間が、痛みとは別の感覚で、熱くなった。

 頬を伝っている唾を、僕は思わず舐め取っていた。ほとんど無意識にやったことだ。
「うそ。こいつ……。あんたのつば、舐めてる」
「ほんと。マジ変質者だったんだ」
 千明さんの、引きつったような笑い声が聞こえた。
「ひゃひゃ、ひゃ。笑える。もっとつば垂らしてみようか」
「やめなって……」
「いいから。あんたも協力して」
「ちょ。んっ……」
 薄目を明けてみると、二人がキスしていた。ちゅぱ、ちゅ、と、唾液を交換する音がする。
 この二人、普通にこんなことしてるのか。
 驚いた僕は、股間の痛みも忘れて目を大きく見開いた。たしかに、小学生双子姉妹のディープキスだ。
「起きたの。起きたら、口開けなさい……」
 口がいっぱいの千明さんに代わって、千影ちゃんが、僕に命令した。
 僕は従った。期待に胸を弾ませながら。
 千明さんが僕の真上に顔を突き出し、その可愛らしい唇を開く。
 白く泡立った液体は、狙い違わず、僕の大きく開いた口に命中した。
 甘い。
 まず感じたのは、それだった。
 味はしないのに甘みを感じる、やや粘っこい液は、僕の口の中にたぷりと溜まっていく。唾を垂らす千明さんの表情が、にたにたと至上の微笑みになる。
「終わり。飲みな」
 二人分の唾液を受け取った僕は、それをもっと味わっていたかったが、命令通りにごくりと音を立てて飲み込んだ。
 美しいものを受け取って、体全体が清められていくような感覚だった。
「ほんとに飲んだ。汚ったねー」
 千明さんは、げらげら笑っている。千影さんは、ぼくを見下ろして微笑んでいた。
 二人を笑顔にしたことで、僕はもうなにも求めなくていいと思うようになっていた。
「なんでもやりそうね……」
「面白いよねー」
「ほんと、面白い……」
 千明さんは興味深そうに、僕の全身を眺めている。横たわって股間を押さえる僕の、脇腹を靴先で軽く蹴ったり、腕を軽く踏みつけたりする。そのたびに僕は、反応してしまう。
「駄目よ。もっと、気合い入れてやらなきゃ……」
 千影さんが微笑みながら、靴裏を僕の額に押し当てた。
 そのまま、体重をかけてくる。
 頭蓋骨がきしむほど踏みつけられ、僕は身をのけぞらせた。痛みと同時に、自分で意識していなかった筋肉の緊張が解きほぐされたいくような、気持ちよさがある。
「すごいね、千影ちゃん」
 感心したように、千明さんがつぶやいた。
「千明ちゃんも、そっち踏んであげたら……」
「やだあ、でかくなってるじゃん」
 またげらげら笑いながら、千明さんは僕の股間を指さした。いつのまにか押さえていた腕が外れ、僕の股間がテントを張っているところが、二人の視線に晒されていたのだ。
「あたしも、そのへんが、むずむずしてきた……」
「え。どうする? 空き地だし、そのへんでやっちゃえば」
「それより……」
 千影さんは、また僕を見下ろして微笑んだ。
「もっといいところがあるよ……」
「?」
「幼稚園のころ、二人で練習したよね……立ったままできないか、って……」
 外見は似てなくても双子の二人には、言わなくても通じるものがあるのだろう。
「――ああ、したねえ。けっこうできるもんだと思った。確かこうやって、腰を突き出して」
「千明ちゃんも、出る……?」
「――言われたら、あたしもなんか、むずむずしてきた」
 そのとき見せた千明さんの微笑は、やはり極上のものだった。
「おい、ヘンタイ。目ぇ閉じて。絶対に明けるんじゃないよ」
 僕はわけがわからないまま、言われたとおりにした。ただし、薄目を明けたままで。
 二人はなにも言わず、それぞれのジーンズとぱんつを膝まで下ろし、僕に向かって腰を突き出す。
 千明さんの、光り輝くようなすっきりした割れ目。
 千影さんの、もやがかかったような控えめな割れ目。
 それぞれが両手で菱形を作り、割れ目を強調するようにあてがう。
「せーの」
 二人同時に言うと、周囲に熱気が立ちこめた。二条の液体が、菱形から僕の口めがけて飛んでくる。
 新鮮な尿の匂いが立ちこめた。
「飲めよ、ドヘンタイ」
「こぼさないでね……」
 口の中に溢れた、今度はあきらかにしょっぱい、熱い液体を、僕は必死になって飲み込み続けた。
 今、わかった。この二人は、千明様と千影様は、どんなに似ていなくても、双子だ。魂で繋がっている、魂の双子なんだ。
 女神たちに感謝しながら、僕は、ズボンのまま激しく射精していた。

2013/09/04
安東熱志

安東のページに戻る

トップに戻る