永遠の時間 ――カトリーヌとリカ

「香山リカさん。ちょっと、いっしょに来てくれる?」

 五年生に転校してきたばかりのカトリーヌが、三年の教室にやってきてリカを呼び出したのは、放課後のことだった。

 気になっていた上級生に呼ばれて、リカは彼女のあとについて歩きはじめた。が、これからなにが起きるのか、不安でたまらない。

「カトリーヌさん。あの、どこへ行くんですか」

「わたしと、デートしましょう」

「デ、デート?」

 予想外の言葉に驚く。

「――あの建物、礼拝堂? あそこがいいかな。案内して」

「はい……」

 神秘的な雰囲気のカトリーヌに気圧されて、ついリカはうなずいてしまった。

 

 ふだん使われていない礼拝堂は、薄暗く、ほこりの匂いが漂っている。木製の椅子が並び、宗教的で荘厳な雰囲気に満ちたその空間に、二人の少女がまぎれこむ。

「ちょっと、その椅子に座って」

 リカが言われたとおりにして、カトリーヌの方を見た、その瞬間。

 彼女はどこから出したのか、両手にロープを持っていた。そしてすばやく、そのロープでリカの両手と両脚を椅子に縛り付けてしまう。両手が椅子の背の後ろで、両脚が椅子のそれぞれの前足に固定される。

「えっ。あの、これ」

「香山さん。いえ、リカちゃん」

「はっ、はい」

 突然のできごとに混乱しているリカは、縛られたことへの抗議も、悲鳴も忘れて、思わずうなずいてしまう。

 そんなリカの耳元に顔を近寄せ、呼吸を感じられるほどの距離で、カトリーヌがささやく。

「わたしのこと、好き?」

「は……はい」

「そう。どういうところが好きなのかしら」

「あの、それは、バレーボールがじょうずだったり、あと」

「あと? それから?」

「えっと、そう、とってもかわいいから」

「かわいい? わたしが?」

「はい。そう思います」

「そう」

 カトリーヌはいったん身を引き、謎めいた微笑みを浮かべたまま、縛られたリカの前を逡巡するように歩いた。

「わたしが、かわいい。ほんとに、そう思うの?」

「はいっ」

「違うでしょ」

「えっ?」

「可愛いのは、あなた。リカちゃん、あなたなの」

「え、そんなこと」

「照れなくていいの」

 ふたたび、カトリーヌの顔が近づいてくる。

「可愛いのは、あなた。わたしは、綺麗なの。わかる?」

「あ? はい。えっと、はい」

 リカにとっては、その二つの単語に違いがあるとは思えなかったのだが、とりあえずうなずいてみせた。

 自分が知らない言葉、知らない世界は、まだまだたくさんあるのだ。

「わたしが可愛かったら、変だもの」

「どうして、ですか」

「だって、ね」

 カトリーヌは、ますますリカの顔に近づいてきた。こんどは正面から、唇が触れそうな距離まで来ている。

「可愛い子は、いじめられちゃうんだもの」

「……」

「わたしがいじめられるのは、変でしょ。いじめられるのは、あなた」

「どうして。だって、あの、じゃあ」

 これからされることにようやく想像が至って、リカは逃げようとした。だが、縛られた両手両脚は椅子から離れない。

「逃げなくてもいいのに。いじめてあげるんだから」

 通じていると思っていた言葉が、通じていないのではないか、という恐怖。カトリーヌが外国からの転校生であることに、ようやくリカは思いが到った。しかし、リカの父親もフランス人だが、日本語で話しているかぎり、言葉が通じないということはない。

 そんなリカのおびえた表情には頓着なく、カトリーヌの顔がさらに近づいてきた。

 同時に、さらさらと流れるリカの金髪へ、きゃしゃな指がまとわりつく。

 頭をしっかり押さえられたかっこうのまま、年長の少女の唇が重なってくる。

 家族以外との、はじめての口づけが、リカの全身を戦慄させた。

 それは恐怖でも、嫌悪感でも、ましてや愛情でもなく、ただ、柔らかくまとわりつく唇どうしの感触だけがもたらした戦慄だった。

「んっ、く」

 唇を軽く吸いながら、カトリーヌが呼吸を漏らす。

 リカもまた、破裂しそうな心臓の鼓動と、うわずってくる呼吸を自覚する。

 九歳の少女を明らかな性的興奮に導く口づけ。

 その口づけを駆使する、謎めいた十一歳の少女。

 カトリーヌの指が、そろりとリカの首筋をつたうように降りてきた。産毛に包まれた柔らかく敏感な皮膚が、快感を増幅させる。

(どうなっちゃうんだろう、わたし)

 不安が、あるいは的確な予感が、リカを支配した。

 微妙にうごめく指先は、いつのまにか腰のあたりまで降りてきていた。制服の、スカートと上着の境界をその感触で見つけ出すと、こんどは上に向かって動き始める。上着の中、スリップドレスの表面を。

 カトリーヌの唇が、ようやくリカから離れた。身動きできない魔法からようやく解放されて、大きく息を吸い込む。

 酸素をたっぷり吸って膨らんだ胸の表面を、撫でるようにカトリーヌの掌が移動している。膨らんだといっても、それはあくまで胸郭がである。肋骨と皮膚の間には、柔らかい筋肉とごく薄い脂肪層しかない。まだ《少女》ですらない幼い胸を堪能するように、歳上の少女は掌を進めていく。

「邪魔、ね」

 カトリーヌの指が、薄いポリエステルの布をもどかしがるように、いきなり鷲掴みにした。そのまま、予想外に強い力で引きちぎる。

「あっ」

 リカは驚いて、カトリーヌの顔を見つめた。だが、至近距離から上目遣いにこちらを見ている瞳に射すくめられ、また身動きできなくなる。

 掌の前にさらされた裸の皮膚が、湿り気と体温を感じる。ゆっくり、ゆっくり、なにかを探すように動いていた指が、かすかな突起に触れて止まる。

 リカの乳頭を探り当てたカトリーヌが、にやりと笑った。

 次の瞬間。その未熟な乳首が、強くひねりあげられる。

「あうっ」

 鋭い痛みに、リカの唇から悲鳴が漏れた。それでもカトリーヌは遠慮なく、敏感な部分をつねり、やや戻してから、こんどはさらに強くひねりながら引っ張り、最後に爪を立ててつまみ上げた。

 そのたびに、リカは激痛を覚え、身もだえし、逃れられないと知ってさらに苦痛を感じる。

「やっ、やめて、やめてぇ」

 泣きながらの悲鳴は大声にならず、広い礼拝堂の外にはとても届きそうにない。そして、唯一その声が聞こえているだろうカトリーヌが彼女の嘆願を受け入れてくれないだろうことを、リカはすでに理解していた。

 どういう理由からかは判らないが、この謎めいた少女は、リカをいじめるためにここに連れてきたのだ。

 いや。理由なら、さっき本人が説明してくれている。

 リカが、可愛いから。

 可愛いから、いじめるのだと。

 それまで九年間の人生で培ってきた価値観も常識も崩壊した、その混乱の意識の中で、リカはただ、カトリーヌの顔を見つめていた。

 畏敬のまなざしで。

 すがるような、そのまなざしの意味を理解したのか。

 カトリーヌはようやく、優しげな微笑みを浮かべ、弄んでいた乳首から指を離した。

 安堵したリカの、制服の上着に手がかかり、一気に引きずり上げられる。

 スリップドレスの破れ目から、真っ赤に腫れた左の乳首と、ほとんど周囲の皮膚と同じ色をした右の乳首が露わになっている。

「可愛い」

 そうつぶやいたカトリーヌの唇が、左、そして右の乳首に、順に触れていった。

 さっき口づけされたときとも違う快感が、リカの胸に拡がっていく。

「こんなに真っ赤になって。ほんとに、可愛い」

 もういちど左胸に唇を触れさせてから、ふいにカトリーヌの瞳が輝いた。

「こっちも、いじめてあげるからね」

 言葉と同時に、右胸に指が迫ってくる。

 リカの視界が一瞬暗くなり、額や頬が冷たくなった。血の気が引く、とはこのようなことをいうのかと、意識の隅でそんなことを考える。

 予想外の痛みを与えられたさっきと比べて、どれだけの痛みが訪れるのか想像できるだけ、恐怖心は今度の方が大きい。そしてその恐怖が、また痛みを倍加させる。

 ひねり上げられた右の乳首から、予想通りの激痛が伝わってきたとき、彼女はまた別の快感を覚えていた。

 

「痛かったでしょう。かわいそうに」

 おためごかしではなく、本気で心配する口調でカトリーヌが慰めはじめたときには、リカはもう、なにがどうなっているのか、自分で自分を理解できない状態だった。

 両胸の、今まではただそこについているというだけだった身体の一部に、痛みの名残りがある。激しい鼓動に合わせて、ずん、ずんと、鈍い痛みが繰り返される。

 そして、痛みと同時に、快感の名残りがある。それが、たとえば唇で触れられたことからの名残りなのか、それとも痛みそのものから来る快感なのか、理解できない。

 そんなことに快感があるという事実もまた、理解できない。

「リカちゃんって、ほんとに可愛い」

 混乱して焦点が合わなくなっている瞳を覗き込むようにして、美少女がささやいている。

「ほんとに可愛いから、もっといじめてあげる」

 繰り返される言葉が、ようやく意識の中に浸透してくる。

 かわいい、いじめる。

 痛い、気持ちいい。

 それが、同じことなんだ。ひとつのことだったんだ。

 そう考えれば、すべてが理解できる。

 そう考えることでしか、なにも理解できない。

 この、きれいな、カトリーヌさんが、わたしを、かわいいと、思ってくれている。

 ただ、それだけのことなんだ。

 いつのまにか、カトリーヌはふたたびリカの胸に唇を寄せている。自分が痛めつけた敏感な部分を、慈しむように吸いつけ、ぽつんと出ている乳頭を舌の先で転がすようにもてあそんでいる。

 恥ずかしい、という意識もない。だから、さっきと同じように唇を使うカトリーヌの手が、頭の位置が下がっている分だけ下に伸び、スカートの裾を持ち上げていることにも、特別な感慨はなかった。

 今度は最初からスリップドレスの内側に侵入した手が、ショーツを探り当てる。有無もなくコットンの小さな布を引き下げようとするカトリーヌに、座った姿勢のままでいるリカは、腰を浮かせて協力した。

 丸いお尻が、滑っこいスリップドレスに直接触れている。ふだんはショーツの当て布に覆われている部分に、冷たい外気を感じる。そうした、はじめての感触にも、もう戸惑うことはなかった。その違和感が、いじめてもらうことにつながっているのだから。

 小さな胸へのキスを終えたカトリーヌは、座ったまま縛られているリカの正面にしゃがみこみ、彼女の膝を可能なかぎり開かせた。膝下に引っかかっていたショーツが足首近くまで下がるほど、両脚が菱形に拡げられる。

 その、自分の脚の間を、美少女が覗き込むようにしている。奥の方は、いまはスカートの下で、暗がりになっているはずだ。だが、膝上までのスカートはスリップドレスの裾ごと、ゆるゆると持ち上げられ、腿が半分、三分の二と、上から見つめるリカの目にも露わにされていく。生白い脚がさらされていくごとに、不安に似た期待が高まる。

 スカートをめくるカトリーヌの動きが、ある時点で止まった。疑問の表情になるリカへ、冷酷な瞳の持ち主が問いかけてきた。

「どうする? ここで、やめる?」

 予想外の問いだったが、リカは即座に首を横に振った。もう、他の展開になることなど、考えられない。《そうなる》ことは、彼女にとって既定の事実になっていた。

「もっと。スカート、めくって、ください」

「でも、そうすると。リカちゃん、パンツ履いてないんでしょ」

「い、いいです、それで」

「見えちゃっても、いいの?」

「うん。は、はい」

「どこが? どこが見えてもいいの?」

「えっと。――お。おしっこの、ところ」

「そう。リカちゃんはそう呼んでるんだ。――もっと言ってみて」

「リ、リカの、お、おしっこのところ。カトリーヌさん、見てほしい」

 誘導されて、そう言った瞬間。蒼白だった顔が、今度は火が出るかと思うぐらい、熱くなった。

 そして同時に、下半身を涼しい空気が吹き抜ける。

 リカの、幼い太股と柔らかい下腹部と、それらに挟まれた筋のような部分が、ついにカトリーヌの眼前にさらされる。

 膝の間に顔を近寄せている美少女の視線をまともに受けて、拡げた脚の中心にある部分が、ひく、ひくと、自分の意志ではなく痙攣のように動くのを感じる。

「――可愛い。恥ずかしがるリカちゃん、ほんとうに可愛い」

 自分の意志に反して動く身体が、それよりも、自分でも観察したことのない秘めやかな部分が、自分を導いてくれる美少女から、どのように思われたか。極限に達していた不安が一気に解消され、その付近の緊張が解ける。

「あっ」

 思ったときには、もう遅かった。

 過剰な緊張が解けたところから、生温かい開放感が抛物線を描く。

 描かれた抛物線が、身体の中心から延長にあった、カトリーヌの顔面に命中した。

「あああああいやあああああぁぁあっ」

 悲鳴のような声を挙げたのは、リカの方だった。

 自分の意志とは、今度こそ無関係に、放尿が続く。自分のおしっこが、汚い液体が、カトリーヌの綺麗な顔をめがけてほとばしり続ける。

 だが、激しい噴出を顔面で受け止めながらカトリーヌは、最初はさすがに驚いた表情を見せたものの、すぐに歓喜の表情となった。歳下の少女が放つ排泄物を浴びせられて、あきらかに楽しんでいる。シャワーが終わった最後には舌を出して、口の周囲に残る塩辛い液体を舐め取りさえしてみせた。

「あ……あ……あの」

 なにを、どう言ったものか。謝ることと、羞恥を表明することと、相手を気遣うことと、歓喜の理由を尋ねることと、どれを優先したものか、混乱したリカにはわからない。

「――ますます、可愛くなってきちゃった」

 尖った舌の先で唇を舐めながら、カトリーヌは凄絶に微笑んだ。

 そのまま、リカの膝の間に位置させていた顔を、前に進めていく。唇を舐めていた舌を、いまは長く伸ばし、リカの身体のある一点を目指して移動していく。

 一点と一点が接触した、瞬間。リカは縛られた体を大きくのけぞらせた。

 口づけや胸を吸われたときとは、比較にならない快感が、全身を貫く。

 その反応を確認してから、軟体動物のように蠢く舌は、左右に分かれた柔らかい肉の砦や、その内部に隠されていたかすかな襞を掻き分けていった。さらに、その付近の中心やや上方、すでに張りつめていた小さな突起を探り当てる。

 のけぞっていた全身が、硬直した。膀胱が空になっていなかったら、リカはまた失禁していただろう。

 その出口たるべき、突起の下に隠された孔が、尖らせた舌先でえぐるように刺激される。かと思えば舌先は溝に沿って下に移動し、もう一つの、まだなににも使われたことのない孔が探られていく。

 そうして幼い陰裂の中で自在に動いていた舌に、援軍が加わる。上下の唇が押しつけられ、ねぶるような動きを同時に始める。そして、小さな、硬い前歯が、リカのいちばん柔らかい部分に触れる。

 次の瞬間。舌と唇の感触に酔っていたリカは、久しぶりに襲った激痛に叫び声を挙げた。悲鳴、などという生易しいものではない。敏感な粘膜だけで覆われた肉が、そこがわずかにでも出っ張っていれば、ところかまわず噛みつかれてしまうのだ。カトリーヌの歯は遠慮もせず、喰いちぎらんばかりにリカの性器全体を責め続けた。

 繰り返される強烈な痛みが、あっという間に意識を支配する。もう、痛み以外のことは考えられない。そして過剰な痛覚は、痛覚自体を麻痺させていく。あとに残るのは、混濁した意識と、そこにいる相手のことだけだ。

 ひととおり責めを終えたカトリーヌは、ようやく身を起こした。激しい責めから解放されてぐったりとなり、みっともなく膝を開き股間をさらしたままのリカを冷たく見下ろし、鼻で笑う。

「あ……かとりーぬ、さ、ん……」

 焦点の合わない目で見上げるリカの顔から、彼女はわざと視線を逸らした。すがるような瞳が、その視線を追いかけてくる。

「あなたのそれって、ほんとに『おしっこのところ』なのね」

 冷たい表情で恥部を見下ろされていると気づき、リカはようやく脚を閉じようとした。が、鈍痛が残っている器官が圧迫されることを拒否する。

 やむをえず脚を開いたまま、リカは涙ぐむ目でカトリーヌを見上げた。その制服が、胸といわずスカートといわず、ぐっしょり濡れて大きな染みになっている。

「ごめんなさい。あの、わたし、おしっこ」

「しょうがないわね。ひとの制服、こんなにして、買ったばかりなのに」

 罪悪感を募らせるような言葉を選びながら、カトリーヌは尿に濡れそぼった制服を脱ぎはじめた。淡いピンクで統一されたファーストブラとショーツまでを、ためらいなく脱ぎ捨ててしまう。

 靴下だけの姿になった少女の姿を、リカが、自分の立場も忘れて見つめていた。

 なんて、きれいなんだろう。

 思春期直前の少女の裸体を見るのは、もちろんリカにとってははじめてだった。

 一方で、両手脚を縛られ膝を開き、恥ずかしい部分だけをさらすように持ち上げられた制服と、破かれたスリップドレスと足首に引っかかったショーツという姿のリカを見て、カトリーヌはまた、わずかに鼻で笑った。

「そのロープ、ほどいてあげる」

「えっ」

「逃げたり、しないでしょ」

「うん……」

「それとも、縛られたままがいいの?」

「――」

 いったん、跡が残りそうなほど両手脚を締めつけていたロープを外してやり、肩や腰に引っかかっていただけの制服を脱がせる。

「下着はそのままね。さあ、そこにひざまづいて。両手を後ろに回して」

 胸のところだけ破かれていたスリップドレスを裾まで大きく破ってしまい、体の前面がすべて露わになるようにしてから、カトリーヌはまたリカにロープを巻き付けはじめた。こんどは手脚だけではなく、胸も腰も腿も、しっかりと、だが必要な部分は露出されるように縛っていく。

 

 こうしてリカは、大きく拡げられた膝とすねでなんとか立っている、という姿勢で、全身をロープで固定されてしまった。長い金髪にもロープは絡み、顔を上向きに固定されている。

 オブジェのようになった幼い半裸体を見下ろして、作業を終えたカトリーヌは満足げにうなずいた。

「可愛いわよ、リカちゃん」

「ありがとう、ございます」

 その言葉が、「いじめてあげる」と同義であることは、もうわかっている。

「どう?」

「くるしい……です」

 眉間にしわを寄せ、九歳の少女はなにかに耐えるような表情で答える。

「苦しいだけじゃないでしょ。ロープで体をきつく縛られると、気持ちいいでしょう」

「はい」

 いまのリカにとって、縛られる苦痛は抱きしめられる快感に似ていた。

 なぜ、カトリーヌが、自分とたいして年齢の違わない少女が、そんなことを知っているのか。考える余地は、もう彼女にはない。

「じゃあ、そろそろお返しをしてあげる」

「おかえし」

「さっきリカちゃんが、わたしにしてくれたこと」

 ぼんやりした記憶を呼び起こす間もなく、カトリーヌの裸体が眼前に迫ってきた。

 立ったままの彼女の股間が、ちょうどリカの顔のあたりにくる。そこから見上げる、期待に満ちた顔、膨らみかけて微妙なラインを描く胸、流れるような曲線の柔らかそうな腹、自ら押し拡げて肉色の中身を見せている性器まで含め、綺麗なものだけが視界を占めている。

 幸福だ、と彼女は思った。幸福という具体的な言葉ではなく、ただ、いま味わっている感情が、全身の状態を含めた感覚が、快く、満たされているのを感じた。

「ちゃんと、口を開いててね」

 言われたとおりにしている口に、大量の温かい液体が流れ込んでくる。それを飲み干し続けている意味を考えることもなく、あふれだして胸や腹にこぼれてしまう分をもったいないと思うこともなく、もたげられた上ばきの硬い爪先がぐりぐりと自分の股間を責めているのを疑問に思うこともなく。

 リカはただ、カトリーヌによってもたらされた幸福に、その身を委ねている。

 時間の流れすら止まり、永遠に続く幸福に。

1999/03/24
minato kusaka

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