食べもの

うどん

東京のうどんはまずい。関西人などは、勝ち誇ったようにそう言う。うん。まったくそのとおりですね。で、それがなにか。
関西風の(というよりは西日本風の)うどんは、たしかにうまい。別に、それを認めないというわけではない。ただ、それに比べて東京のうどんがまずい、という比較そのものが、実はおかしいのだ。
だいたい東京では、うどんなどというものはまともな食べものだとは思われていない。関西はうどんが主食だから、そうじゃない状況というものが理解できないのかもしれないが、東京人にとってうどんというのは風邪のときにだけ食べる、言ってみれば薬の延長のようなものだ。薬がまずいと言われても、別にプライドが傷つくということはない。
プライドが懸かっているのは、蕎麦だ。関西のみなさん、東京の悪口を言いたいと思ったら蕎麦をけなしなさい。そのときはまた、わたしは反論しますが。

1998/03/13

タイ米

いいから食わせろよ。米の輸入は自由化したんじゃなかったのかよ。高級デパートにもあっちこっちの輸入食品店にもないってことは、食える方法がないってことじゃないか。高くてもいいからタイ米食わせろっつってんだよ。ぜんぜん別のもんなんだから、どっちにしても代替は効かないんだよ。なにやってんだ食糧庁だの農水省だのってのはよ。しまいにゃ本気で革命起こすぞコラ。

1998/08/25

上で「自由化」と書いたのはちょっと筆が滑ったので、この時点では「ミニマムアクセスの受け入れ」または「輸入が始まった」が正しい。最近になって「関税化」というかたちでやっと本当の自由化に向けての目が出てきましたが、まだ道は遠いなあ。ミニマムアクセスで輸入された分は、やはり加工用や他国向け援助に使われているらしいです。いいから食わせろよ。

1998/12/24

嫌いな食べもの・飲みもの

基本的に、嫌いな食べものはない。なんでもよく食べ、しっかり肥えている。
と、自分では思っていたのだが、ひとつだけどうしてもダメなものがあることを思い出した。ゲテモノ関係は別にして、わりとどこにでもある、コンビニでも自販機でも売っていれば、どこの町にも必ず専門の販売店と専門の飲食店があるような、そんな食べものだ。正確には飲みものだが。
酒がダメなのだ。昔はむりやり飲んだりもしたのだが、あとで必ず気分が悪くなる。アセトアルデヒド分解酵素がないというやつだ。どういうことだか具体的に説明すると、飲み始めてしばらく経つといきなり二日酔いが始まる。どんなに酒の味が好きだという人でも、この状況には耐えられないはずだ。
そもそも、あの匂いがいやだ。ツンとくる揮発性のアルコール臭。味もどうかと思う。ビールやワインや日本酒の、それ自体のうまさというものは理解できるのだが、よけいな成分(ここではアルコールのことだが)が入っていることで、すべて台無しになってしまう。ビールなりの独自の風味というものがあるのに、それがアルコールのせいでぶちこわしにされている、実はそれがなければもっと美味しいはずだ、ということに、なぜみんな気づかないのだろう。反論の内容は予想できるが、実際おれはアルコールの味そのものがまずくてしょうがないんだから、こう言うしかない。
害悪だって、タバコの比ではない。酔っぱらい運転による死者と肝硬変その他の病気による死者の数を合わせると、年間どのぐらいになるのだろう。肺ガンより少ないということはないはずだ。なのになぜタバコ喫みばかり責められて、酒飲みは大手を振っていられるのか。周囲への迷惑という点だって、駅や街角でゲロ吐くバカや見知らぬ他人を含めた周囲に絡む始末に負えない酔っぱらい、酒乱のために家族を悲惨な目に遭わせている例など、枚挙にいとまがない。
いかん、どうもこの話になるとヒステリックになってしまう。「だから酒を禁止しろ」より「だからタバコへの迫害をやめろ」と言いたかっただけなのだが。
酒は文化である。フランス料理にワイン、日本料理に酒。いずれも欠かせない、どころか、あれらはまず酒を楽しむために、壮大なおつまみとしてデザインされた料理なのだが、やはり人類の文化においてひとつの頂点に達した作品だと認めないわけにはいかない。だが世界を見渡してみれば、酒を前提としない料理体系の方が多いのではないか。
フレンチと中華と和食が世界三大料理、というのはだれが言い出したか知らんがたぶん日本人だろう。タイ人も同じような発言をするらしい。たわごとはおいといて一つだけ頂点を選ぶとしたら、フレンチか中華か。素材の扱いといった視点で決めることもできるが、ひとつの考えとして、酒に頼らず独立して楽しめる中華の方が料理としての格は上だ、というのはどうだろうか。(飲むと神経が麻痺して感覚が鈍くなる)酒と一緒に料理を食べるなんて、料理に対する侮辱といってもいい。

うむ。すまん、いつのまにかタイトルとぜんぜん関係ない話になってしまった。

1998/08/25

最近、ノンアルコールビールの味を覚えてしまった。まずい。あれはまずい。缶入りのものだと金属臭がきつくてどうしようもないのだが、ビールの楽しみを味わわせてくれるというだけで捨てがたい。アルコールのまずさと金属臭のまずさ、どっちを選択するかといえばアルコールよりはまし、というわけだ。
アルコールのまずさについてだが、ひとつ思い出したことがある。壜詰めの雲丹があるでしょう。アルコール臭ぷんぷんのあれを食べながら、「この臭いがなければなあ」と思ったことはありませんか。じっさいあれこそ、なんでわざわざアルコール入れてまずくするんだろうと思わせる食べものの代表だ。

1999/03/28

味噌煮込みうどん

上記「うどん」とはまったく関係のない話である。
祖父が三河の出身、とはいえ祖母も母も別の地方の出身で、家の味を受け継いだということもないはずなのに、どういうわけか味噌煮込みうどんには惹かれるのだ。ときおり、無性に食べたくなる。もちろん、味噌煮込みきしめんでもいい。要はあの三河味噌の味に惹かれているのだろう。ところがこれが、東京ではめったに手に入らない。なぜだ。みんな、あれが無性に食べたくなるときというのはないのか。
そこで友人たちに話を聞いてみると、どうやらあの味は誰にでも好まれるというものではないらしいのだ。これにはけっこう驚いた。東京育ちのわたしの父親も、同じようにやたらと味噌煮込みうどんを食べたがることがある。あれはそういう魔力のある食べもので、この感覚はわりと普遍的なものだと信じていたからだ。
ところがさらに調べてみると、家族の中で父親とわたしはこのとおりだが、母親や姉は食べれば「おいしい」と言うものの、虜になるというほどではないらしい。たとえば法事などで三河に行ったときに土産用の味噌煮込みうどんを自分のために買い込む、ということはしない。これはなにか……男にだけ伝わる三河者の隠された血が騒ぐ、とでもいった話なのだろうか。他のことに関しては、あまりそういう自覚はないのだが。
とりあえず、寿がきやのインスタントぐらいはいつでも手に入るようにならないものかなあ。

1998/09/14

レシピ −ドンのカルボナーラ

 なぜこういうネーミングなのかは謎ですが、身内ではこう呼ばれています。
 おなじみのスパゲッティ・カルボナーラを、いかに安上がりに、そこそこの味で楽しむか、がテーマです。しょせん「もどき」なので、ちゃんとしたものが食べたいひとはちゃんとした本で作り方を調べてください。
 材料費だけだと、これで300円するかしないかまで押さえられます。
 アメリカンコーヒー(MJBやHillsを安売りしてるよね)をたっぷり用意して楽しみましょう。ゆで野菜のサラダなども添えるとバランスがよくなります。

  1. お湯をたっぷり(3l以上)沸かし、塩をたっぷり(小匙2杯以上)入れて、スパゲッティをやや固めにゆでます。ああ、当り前の説明だ。
  2. 深めの大きな皿、というより浅い丼ぐらいの器に卵を割り入れ、塩を小匙1杯弱入れてほぐします。黄身も白身もめんどうだからまるごと使っちゃいます。黄身だけをもう1個加えるとリッチな味になりますが、白身が残ってもったいない。
     ここに生クリームを加えます。本物の乳脂肪100%の方が美味しいに決っていますが、植物性油脂を使った安いホイップ用クリームでもなんとかなります。値段が3倍近く違うもんなー。
  3. ベーコン(ショルダーベーコンで充分です)を1cm幅に切り、フライパンに油を引いて中火で熱したところに入れて炒めます。油は上等なものをほんの少しだけ使いましょう。安いからって大豆油なんか使うとくどくて厭になります。オリーブオイルならピュアタイプ(ヴァージンオイルはこの場合不向き)、あるいはキャノーラやコーン油で。ベーコンの脂と合わせて、フライパンの底がたっぷりかぶるぐらいが適当です。
  4. カリカリに炒め上がる寸前に、あらびき胡椒をたっぷり振っておきます。胡椒の粉が炭の粉に見えるところがカルボナーラ(炭焼き風)の由来だそうですから、遠慮せずに。火を止めてから、ゆでたてのスパゲッティをフライパンに入れて、油とベーコンをからめるつもりで混ぜます。
  5. 本当ならこのフライパンに2.のソースを入れて混ぜるのですが、あとで洗うのが面倒なので、4.の方を2.の皿に入れてしまいます。また、下手にフライパンにソースを加えると、卵が固まってしまってせっかくの味が台無しです。よく混ぜ合わせ、粉チーズをたっぷり振ります。
    オレガノをちょっと振ってもいいです。間違ってもタバスコはかけないように。

 イレギュラーですが、ベーコンを炒めるときニンニクの薄切りを一緒に入れると、違った味わいがして面白いものです。とくに勧めませんけどね。
 油は入らないほうが美味しいのですが、ベーコンは入っていた方がいいので、そこらへんの兼ねあいが難しいところです。思い切って4.の過程を全部省略してしまっても、それなりに楽しめるものになります。ビンボくさいけどね。

original text 1994/05/03
retouched 1998/10/11

カレーうどん

あるイベントというか行事のために、ある大学の学食に堂々と潜り込めたことがある。学校を出てからもう七、八年は経っていたころだし、そもそもわたしの在籍していた(ここで「通っていた」と言わないのは正鵠を期しているのである)大学にはまともな学食がなかったので、なにかと新鮮な経験であった。カレーうどんにコロッケと生卵と、あと稲荷寿司ではなかったかもしれないがなにかを添えて頼んで、たしか500円としなかった。
大喜びで席に着き、「なにかすごい贅沢をしているような気分になるなあ」と思わずつぶやいたら、同席していた友人がげらげら笑って「おまえふだんなに喰ってるんだよ」と言ったものだが、なにがそんなに可笑しいのかいまだに判らない。
それはまあ当時ろくなものを喰っていなかったのは事実であるが、ところでみなさんはそのへんの立ち喰いうどんでけっこうである、カレーうどんにコロッケと生卵をいっしょに頼んだことはあるだろうか。これは幼いころ読んだ吉田健一の本に出ていたコロッケ蕎麦の真似をしただけのものであるが、その取り合わせが旨いものであるかどうかは別として、そうした注文のしかたはふだんならなかなかできない。素うどんにカレーだけ、コロッケだけ、卵だけを載せてもそれで立派な立ち喰いうどんとなるのであり、それをいっぺんに食べようというのは要するに無駄をしているのだ。意識して無駄を楽しむことを、贅沢と呼ぶのではなかったか。

1998/11/23

日本米

米のことになると、たいていの日本人は頭がおかしくなる。自覚はないかもしれないが客観的に見てそうなのだから、これからはあなたも自覚された方がよろしい。
そりゃまあ、わたしだって白い飯はうまいと思うしたびたび食べてもいるのだが、たぶん平均的日本人に比べたら極端に食べる機会が少ないだろう。いつだったか、飯を炊こうと思ったら炊飯器を置く場所がなくて戸惑ったことがある。考えてみるとそのしばらく前にオーブントースターを買って、そいつに置き場所を占領されていたからなのだが、トースターを買ったのはちょうどその1ヶ月前の出来事だったのだ。1ヶ月間、炊飯器に触らずにいたのである。念のため、ほとんど外食をしないので、その間ずっと自炊というか自宅で食事していたのだ。このときは、たまには外で牛丼ぐらいは食べていたと思うが、また別の機会にこれは意識して1ヶ月間米の飯を食べなかったことがある。気づいたら1週間ほど飯を炊かずにいたので、ではどこまでできるかやってみようと思ったのだ。ということは、上記トースター事件より前だったんだな。その期間中、たまたま外でラーメンを食べようとしたらサービスライスと称する茶碗半分ほどの飯が勝手についてきて、わざわざ突き返すのがいささか恥ずかしかった。考えてみたら黙って残せばよかったのだが、そういうことをできない教育を受けているのである。この1ヶ月は、どうしてもカレーライスを作りたい誘惑に負けた。
牛丼、カレーライスと続けたが、さらに考えてみると「白い飯」というものはたしかにほとんど食べていないかもしれない。青椒牛肉絲でもベーコンエッグでも、なんでも飯の上に載せて食べてしまう。その方が明らかにうまいと思うし、飯というものはそれを受け止めるだけの実力を持っていると評価しているのだ。そりゃまあうまい佃煮と漬物と減塩ではない梅干とぷりぷりした筋子と粉を吹いたような塩鮭でも並べられた上に野菜の味がする熱い味噌汁が添えてあるのなら白い飯は飯でいただくだろうが、それだって鮭の脂や筋子の汁気をまぶしながら食べるものじゃないのか。だったらお菜が一品しかない場合、最初から飯の上に載せてしまっても不都合はあるまい。
ほら。「飯はほとんど喰わない」と言っておきながら、なんだかんだでいざ話し始めるとこんなに長くなる。だから、米のことになると、わたしを含めてたいていの日本人は頭がおかしくなるというのだ。

1998/11/23

レシピ -ご飯の炊き方

別にガスで炊いたからってそんなにメリットがあるわけでもないと思うのですが、電気釜は三合炊きしかないけどもっと大量に炊きたいとか、電気が停められててガスでなんとかしなきゃいけないとか、そういうときに覚えておくと便利です。あ、あとキャンプとか。
さすがに、電気釜でご飯を炊いたことはある方を前提に話を進めます。 ガス台の前から離れられないだけで、手間そのものは電気釜より極端に増えるわけではないと思います。

  1. 米は洗うのではなく少ない水で力を入れて研ぐもので……研いだらよくすすいでから水に浸けておかずにザルにあげて30分……
    いいや、このへんの説明はめんどくさいから。ふだん通りのやり方でもほとんど問題ないです。失敗も味のうち。
  2. 水加減は、炊飯器内釜の目盛りに依存できない場合には困ってしまいますが、これもいいかげんでも、じつはなんとかなります。いちおう、米の量の一割増しが目安ということだけ覚えておいてください。あとは試行錯誤で学びましょう。少なすぎるよりは多すぎる方が、とりあえず途中でのフォローは利くし食べられるものに仕上がります。
  3. 鍋にきっちり閉まるフタをして火に掛け、強火で沸騰させます。沸騰したら中火にして、水分が蒸発していくのを待ちます。で、この段階まではフタを開けてもかまいません。水加減が多すぎたと思うときは、途中ででも強火にするなり、フタを開けるなりして蒸発量を増やすことで調節もできます。ただし、何度もフタを開けたり水を差したりして鍋の中の沸騰が途切れると、芯が残ってしまう。ということなのだと思います。たぶん。
  4. いきなりですが、ここで米が炊けるメカニズムを説明しておきます。お湯で米を煮ながら水分を浸透させていき、煮上がったころに余計な水分が蒸発なりして無くなっていれば、それで日本式のご飯ができているのです(このとき余計な水分が残っていたら、それはお粥と呼ばれます)。それ以外に伝えられているコツだの秘伝だのは「美味しくするため」のものであり、あるいはかまどで火加減が調節できないときや電気釜で火加減に介入できないときのノウハウであり、また「フタをぜったい開けてはいけない」という迷信に基づいたものであって、そうしないと食べられない、というものではありません。上で書いたことと関連させれば、こういう迷信あるいは信仰がはびこっているのも、米を前にして頭がおかしくなっている証拠のひとつです。
  5. 水分がうまく飛ばされたと確信できたあたりで(鍋から「グツグツ」という音がしなくなるわけです)火を止め、10分ほど蒸らします。これも必要なのかどうか疑問に思っているのですが、まあ別に手間がかかるわけじゃないし、失敗するよりはましだろうと思って実行しています。フタをぜったいに開けてはいけない、というのは、この段階のことです。
  6. あとは盛りつけて食べる……これも説明のしようがないな。お好きなようにどうぞ。上記のとおりやって失敗したからといって抗議されても聞く耳持ちませんので。次からはミスした点に気をつけて上手にやろうね、というアドバイスができるだけです。逃げるようなことばかり書いていますが、アナログ的な作業を定量化せずに説明していると責任とれないんですよ。いっぺんやってみて成功すれば、「ああこういうことか」とわかるはずなんですが。ご飯の前にお粥を炊いてみて(水を倍量ぐらいにする)、米が煮えるとはどういうことか把握しておいた方がいいのかもしれません。

1999/03/28

レシピ −ニラレバ焼きそば

とにかく自炊しているとビタミンAと良質のタンパク質が不足してしょうがないことがあって、そういうときに発作的に作りはじめたメニューが、何度も繰り返しているうちにだんだん洗練されてこうなりました。同じ目的のためには鰻丼でもいいんだけど、予算的にほんのちょっと問題がある場合にはこっちにしています。鰻の蒲焼きの温め方はいつまで経っても洗練されないな、俺。
ニラの旬は、たぶん6月前後です。このころがいちばん安いみたいだから。鶏レバーはあまり旬とは関係ありませんが、できればハツがついているものだと有難味が増します。とにかく新鮮なものを。焼きそばは普通の3食入りでスーパーで売ってるやつです。特売日の目玉商品になるのを狙うか、見切り品で50円引きのシールが貼られるのを待ちましょう。1袋150円以上で買うのは間抜けのような気がして、どうしてもできません。あと卵はやっぱりMサイズ1パック100円以下が基準だよね。

  1. まず、よく熱した中華鍋に油を引いて、麺を2玉炒めます。付属のソースはもったいないけど捨ててしまって(どうせそんなにうまいもんじゃないでしょ)、塩と酒か、醤油か、ナンプラーか、いずれかで軽く味付けします。差し水なんかしないで、からっと乾かすぐらいのつもりで強火で炒めましょう。炒め上がったら、そのまま皿に取っておきます。
  2. 麺を炒める片手間に、鶏レバーの下ごしらえ。まずハツを外し、これは縦に開いて軽く水洗いし、塩と胡椒をしておきます。レバー本体はだいたい三等分か四等分します。大葉と小葉に別れているところを、小葉のサイズに合わせるぐらい。という説明で通用するのかな。実際にやってみればすぐわかります。レバーには、ハツより少し強めに塩をしておきます。ヒマだったら、酒とかショウガの絞り汁とかを少量かけて混ぜてしばらく置いておきます。血抜きは、わたしはやりませんがやりたい方はご自由に。
  3. ニラは洗って根本を落として一寸五分ほどのザク切りにします。生活に密着した数字は尺貫法かヤード・ポンド法の方がしっくりくるのはなぜだろう。米一合とか肉一ポンドとか。だからってそれを機械のネジ山にまで持ち込まれると腹が立ちますが。とにかく、上記のレバー一切れか、モヤシを入れる場合のモヤシ一本の長さと思ってください。でもモヤシ入れるよりニラを2把入れた方が楽だしおいしいよ。
  4. レバーの分量を書いていなかったな。たぶん200グラムかそこらで1パックです。これでハツが4ヶぐらいあると思うので、麺を炒めたあと油を引きなおした鍋で、焼きます。ステーキを作るぐらいのつもりで丁寧に。ここがいちばん美味しいんだから。血の滴るぐらいのミディアムがいけます。
  5. このとき、鍋の面積が半分以上余っててもったいないと思ったら、卵をひとつ落として目玉焼きを作ります。いくらなんでも、ここまで読んだ人で目玉焼きの作り方を知らない人はいないだろうなあ。なので、ここは「半熟のターンオーバーにしてください」と簡単に済ませます。白身がハツにくっつかないようにね。目玉焼きは炒めた麺の上に、ハツは別皿に入れてつまみながら続けてもよし、いっしょに麺の上に載せておくもよし。
  6. ここまで読み返してみたら、順番間違えているなあ。これは洗練される前の方法だ。まずレバーの処理→焼きハツと目玉焼きを作りつつニラ切り→麺炒め、という順序の方が、とうぜん手際よくやれます。料理するときは、常に先のことを考えながら行動しましょう。こっちの進行だと、油の量や火力がどうなるか、すぐわかりますよね? 
  7. ようやくニラレバの作り方に入ります。強火で熱した中華鍋に油を引きなおします。洗練された手順なら、油の引きなおしはこの一回だけですね。ここはサラダオイルだけではなく、ゴマ油を半分混ぜて使います。下ごしらえしたレバーを放り込んで、表面が白くなったぐらいですぐに切ったニラを入れる。味はすでにレバーの方に付いているはずなので、ニラに油が回ってしんなりしはじめたらもう充分ですから、炒めておいた麺の上にどさっと載せます。レバーの中身がピンク色で中心がとろっと半熟になっていればそれでオッケーです。完璧です。新鮮なレバーを使いなさいって言ったでしょう。
  8. 豆板醤があったら(それだけ嘗めても美味しいぐらいのちゃんとした豆板醤であること)ちょっと添える。烏龍茶はいつでもポットに入っているものだという前提を書き忘れていましたが、だいたいこれで一食分が完成。いただきます。
  9. ここまで鍋ひとつしか使わないんで、ヒマがあったら別の小鍋にお湯を沸かし、ガラスープの素とか味覇(商品名。中華スープの素)とかを溶かして軽く塩味をつけておき、溶き卵を流し入れたらその瞬間に火を止め、黒胡椒を振ってゴマ油をちょっと垂らし、椀によそってから刻んでおいた葱を浮かせたものを作ります。作ったあとそのまま流しに捨てると怒られるので、せっかくだから焼きそばと一緒に食べるとあら不思議。おいしいわ。ということで。

1998/11/26

レシピ −スパゲッティー・ペペロンティーノ

非常に微妙な料理です。「簡単なだけに奥が深い」と言ってしまうとありきたりになるので言いませんが、とにかくそういうことです。わたしも2回に1回ぐらいしか成功しないんですが、なんとかいままでにつかんだコツを記述しておきます。

  1. スパゲッティーは、ゆで時間9分のものを用意します。7分のものだと、いろいろと間に合いません。11分というのはたいてい嘘なので信じないように。太さでいえば1.9mmのもの、かな。
  2. ニンニクの皮をむいて1ミリぐらいにスライスしておきます。既製のおろしニンニクだとやっぱりだめみたいですね。唐辛子は、鷹の爪を5ミリぐらいにハサミでカットします。とりあえず、ここでは日本産の唐辛子ということにしておきます。韓国産のものも試してみているんですが、どうもコツの所在が違うようです。もちろん、いずれも分量はお好みで。
  3. 大きな鍋に湯を沸かし、塩を投入します。塩が完全に溶けたところで必ず味を確認しておきます。ちゃんと湯に塩味がついているぐらいのところが目安だと思います。完全に沸騰したら、麺を投入してゆではじめます。
  4. ゆでるのと並行して、大きなフライパンかよく洗った中華鍋に、ヴァージンオリーブオイルをたっぷり、たぽたぽというぐらい入れてから火にかけます。必ず中火かそれ以下で。火をつけた当初からニンニクを投入しておきます。唐辛子はちょっと待って。
  5. ここがポイント。ニンニクと唐辛子は要するに、オリーブオイルでぐつぐつ煮るんです。ヴァージンオイルを油だと思ってはいけません。オリーブの実を絞ったジュースです。ニンニクを焦がしては論外ですが、完全に火を通さないと旨みもなにも出ません。ニンニクに半分がた火が通ったら唐辛子を投入して、タイミングを見計らいます。
  6. 麺がゆで上がりつつあるはずです。ちゃんと時間は計っていますね。5分半ぐらいのところで、ゆでている湯を玉杓子で4〜5杯ぐらい器に移しておきます。これが早すぎると、ゆで湯じゃなくてただの塩水の熱いのですから間違えないように。ほんとはこれでも早いんだけど、段取りとしてしかたありません。なんか方法があると思うんだけど。
  7. そろそろ麺の硬さを見ます。麺を一本とり、前歯で噛みちぎって、味と同時に断面を見るのが確実です。ここで芯にぜんぜん火が通っていない状態、6分ちょっとぐらいのところでザルにあけてしまいます。日本で売っているスパゲッティーのゆで時間表示は、アル・デンテより必ず1〜2分長めになっていると思えば間違いありません。ここでは、それよりさらに早めに上げるのだ、ということを認識しておいてください。
  8. この瞬間に、ニンニクがちょうどこんがりと色よく煮えているといいのですが。鍋や火力や切り方によってたぶん違ってくると思うので、何度か試して最適のタイミングをつかんでおいてください。とりあえず、ちょっとでも焦げてしまうと話にならないので、最初のうちは麺の方を待たせるぐらいのつもりでもしょうがないかもしれません。
  9. フライパンにゆでかけの麺を投入し、香りの付いた油をざっと全体に絡めたら、さっきのゆで湯を少しづつ戻していきます。麺の下に湯が流れるぐらい、たぶん玉杓子3杯ぐらいが適量です。つまり、ここでオイル+ゆで湯のソースで煮込み、アル・デンテに仕上げるのです。
  10. 湯を入れたらすかさず強火にして、あおるなり箸で持ち上げながら混ぜるなり、麺がちぎれたり痛んだりしないようにしながら水分を飛ばしていきます。全体がしっとりするぐらいの水分量を目標にして、手前で何度か味見をします。塩気が足りないなら、まだ湯が残っているうちに、早めに調整しておくこと。多少水分が多くても、麺の硬さがちょうどよくなったらそこで完成なので、すぐに皿にあけてしまいます。食べるのも時間の勝負だと思ってください。

1998/11/26

レシピ −スパゲッティー・トマトソース

ペペロンティーノのついでに書いておきます。あれが作れるようになれば、パスタ料理を半分マスターしたも同然。マスターしてないやつが言っても説得力ありませんが。

  1. 上記を参考に、大きなフライパンにたっぷりのオリーブオイルでニンニクと唐辛子を煮ておきます。
  2. 一通り仕上がったら、缶詰のトマトをぶち込みます。あ、あらかじめ刻むなり、ボウルに入れてフォークか指で潰しておくなり、最初からダイスに切ってある缶詰を使うなりした方が利口です。煮込みながら潰すのも可能なんだけど、このときは指でやらないように。もしかしたらトマトジュースでもいいのかもしれないけど、まだ試したことがありません。乾燥した麺300gに対して400g入りのトマト缶詰一個でたぶんちょうどいいぐらい、だと思う。個人的にはこれで一人前。
  3. さっき「たっぷり」と書いたオイルの量ですが、煮込んでいるうちトマトの表面にどべっと油が浮いてくるぐらいの「たっぷり」だと思ってください。足りなかったら遠慮しないで、煮込んでいるところにヴァージンオイルを流し込む。油じゃなくて、香りを楽しむためのジュースなんだから。パスタ料理はこのへんアバウトでもけっこうなんとかなってしまうんで、ことさらペペロンティーノを難しく感じるのかもしれない。それと、乾燥ものでいいから、煮込むときにできるだけオレガノを入れておきましょう。バジリコを入れるなら、煮上がる寸前にちょっとだけ。
  4. よくかき混ぜながら焦がさないていどの強火でぐつぐつ煮込んで、全体がとろっとしてきたら、それでトマトソースの完成です。大量に作って冷ましてから冷蔵庫に入れておくと便利、とかそういうノウハウもあるのかもしれませんが、こんな簡単なもんなんだからいちいち作ったってたいしたことないでしょ。他の料理にいろいろ応用できるのもたしかですが。
  5. とりあえずそのまま、ゆでたてのスパゲッティーにぶっかけてもいいんですが、もうひとひねりしてみます。ここまで塩味のことを言っていませんが、缶詰トマトの味だけで充分だよん。日本人塩分取りすぎ。ところで、無塩のトマトジュースってなんであんなにまずいんだろう。みんななんか勘違いしてないか。自分の命とうまいもの喰うのと、どっちが大事だと思ってるんだ。とうぜん、うまいものの方が大事だよな。
  6. 話がそれた。フライパンで煮込んだトマトソースに、ゆでたてのスパゲッティーをえいやと投入します。失礼、「ゆでたて」じゃなくて「ゆで上がる直前」。ペペロンティーノと同じく、ソースを絡めた鍋の中でアル・デンテにするんだと思ってください。やはり同じように、ゆで湯を入れてからあおって水分の調整をします。適当なところで完成。
  7. このとき、麺といっしょにツナ缶を入れればツナスパゲッティー、トマトソースを煮るときにエビとアサリとイカを煮込めばペスカトーレ、アサリだけならボンゴレ・ロッソ、最初の唐辛子を多くするかあとで粉唐辛子を足せばアラビアータになります。なるんだと思う。そのへんあまり追求しないでください。作って食べてみてうまけりゃ名前なんかどうでもいいと、ロミオとジュリエットも言っていたじゃないか。あの劇はイタリアが舞台です。

1998/11/26

書くのを忘れていたけど、トマトソースのばあい、さいしょにニンニクと唐辛子を煮る段階でアンチョビを入れておくとじつに旨くなります。香りとコクを出すのが目的なので、缶詰でもビン入りのペーストでもよろしい。ところでアンチョビとは、鰯の一種を塩漬けにして発酵させたものなので、味や匂いがなにかに似ている。なんだったかなあとしばらく思い出せなかったのですが、なにかのきっかけでほぼ同時にアンチョビソースと鰹の酒盗を並行して使っているときに気がついた。ようするにどっちも、青背の魚の塩辛ですからね。鰯で作ったナンプラーがあればそれでもいいのかもしれないけど、とにかく日本ではアンチョビソースより特殊なナンプラーより酒盗の方が安い。まさかと思うでしょうけど、トマトソースに入れると美味しくなりますぜ。
ついでに、たたみいわしにも同じ匂いがかすかにする。これも小なりとはいえ鰯を内臓ごと干す段階でいくらかは発酵するからでしょうね。発酵と腐敗との区別は主観によります。

1998/12/24

大根

ここんとこ、野菜が高くてかなわない。なんでこの季節に、うらなりみたいな長葱が3本で248円もするんだよ。ふだんの年ならせいせいがとこ150円だぞ。
ところでわたしが住んでいるあたりは、いちおう東京二十三区内なのだが、物価が安いのか本来の意味でのディスカウントストアが多いせいなのか、ちょっと探せば肉でも野菜でもかなりとんでもない値段で売っている店を見つけられる。豚並挽肉は100グラム48円が目安で38円のものまである、といえば、自分で買い物する人ならだいたいの見当がつくと思う。ちなみに大手スーパーだと、上挽肉が100円以上することもある。もちろんそれなりの品質ということにはなるのだが、豚挽肉にまで刺身で食べられる品質を求めることはあるまい。
前置きが長くなった。このあいだ、そういう青果店のひとつに買い出しに行ったら、なにやら珍しいものが売られていた。だいたいなんの説明もなく商品が並べられていて、売り子のお兄ちゃんも日本語が通じなかったりする店なので(そのかわり、エスニック系の食材も扱っているので、わたしとしてはありがたい)、もしかしたらと思いつつも自分の判断と責任で買うしかない。切れ込みの多い青菜で長さは一尺半ぐらい、片手に余るぐらいの一把がたった100円である。ためつすがめつもしてみたが、このご時世にはなんだってありがたい。買って帰って刻んで煮干し出汁で味噌汁にしたり胡麻油と塩で炒めたりしてみると、やっぱりあの味だった。大根の葉を売っていたのである。
あれは青菜の中でも旨い方のもんだ、捨てるやつの気が知れない、というのは別にして、しかし売るかなあ。ふだん「くれ」と言い出す勇気がなかなかなくて自分にとって幻の味になりかけていたので、嬉しいといえば嬉しいものの、基本的にただで貰えるもんだと思っていたのだが、まあしょうがないものなのかもしれない。そういえばその店では、ショウガの切れっぱしばかりまとめて1パック80円というのも売っていた。一人前一回分としては手頃なサイズのものばかりだったんで、もしかしたらこの野菜の高騰がしばらく続いてくれるのは、わたしにとってはいいことなのかもしれない。口が貧しいだけかな、これ。

1999/02/07

ブロッコリー

東京近郊のある街で生産される野菜から基準以上のダイオキシンが検出されたとかで、パニックになっているらしい。その街は、わたしが住んでいるところにも近いし、その市内あるいはすぐ近くには友人や親戚が住んでいて、まったく他人事ではないのだ。
その騒ぎが始まった数日後にスーパーに行くと、「○○産の野菜は扱っておりません」という札があちこちに張り付けられ、店内アナウンスでも特売品案内のあいまにその旨を繰り返し伝えていた。しょうがないからカリフォルニア産のブロッコリーを買ってきたのだが、なんなんでしょうかねえ。他人事だと思っているのかね、やっぱり。○○のキャベツにかかったダイオキシンを避けてカリフォルニアのブロッコリーにまぶされたDDT(じゃないかもしれないが)を食べてりゃ、おんなじだよ、おんなじ。パニックってのは大局観のないところから生まれるんですねえ。
つまんない話になってしまったので、レシピに逃げる。緑色で歯ごたえのあるブロッコリーって、なんだかじつに「野菜を食べている」って実感があっていいですね。特に、茎んとこが旨い。まず、房の方を切り取ってバラしておく。茎の表面に根元から包丁を入れると、面白いように皮が剥けるので、残った芯の部分を適当に薄切りして、あとは房といっしょに少量のスープでさっと煮てからバターを落とすなり、オイスターソースで炒めるなり、ご自由に。火の通し加減は半生ぐらいがいちばん旨いです。
一行知識にも逃げておこう。ブロッコリーとカリフラワーは、いちおう別種(百科事典で調べた)。だけどごく近似種なので、同じだと言い張ったのはべつに間違いではないのだ(こないだこれで恥を掻いた)。

1999/02/07

レシピ -牛丼・親子丼

わざわざ公開するほどのものでもないが、知っておくと役に立つ手抜き料理。

  1. ご飯を炊きます。鍋で炊くのは自由だけど、こういうばあいわたしは炊飯器を使います。
  2. タマネギを縦半分に切ってから薄切りにします。大きいタマネギなら一個の半分、小さいものなら一個分ぐらい。
  3. インスタントラーメン用の小鍋(16〜18cmの行平鍋)または目玉焼き用のテフロンのフライパンに、肉を好きなだけと切ったタマネギを入れ、火にかけます。
  4. めんつゆを、丼一杯のご飯にちょうどいいぐらいの量(鍋に回し入れるぐらい、かな?)鍋にぶっかけ、好きな味になるよう水で薄めます。3倍希釈のつゆの素なら2倍に薄めるぐらい、というのはわたしの好みなんで、そのへんはご自由に。
  5. あとはグツグツ煮て、タマネギに色が付き肉の赤みが消えたら、まあ出来上がりです。丼によそったご飯にどさっと乗っけます。
  6. インスタントの味噌汁ぐらい作ってもバチは当たらない。七味・紅ショウガ・生玉子などの使い方はご自由に。
  7. 以下、応用編で親子丼の作り方。牛肉の代わりに鳥の胸肉を一口大に切って、タマネギといっしょに同じように煮ます。つゆは上記よりちょっと薄めに(つゆの素を減らすんじゃなくて水を増やすんですよ)。牛肉より厚みがあるだけ火の通りが遅いので注意。玉子2個をよく溶いておいて、鶏肉が煮上がったころ上からまんべんなく回し掛け、適当なものでフタをして30秒ぐらい待ってから火を止め、ご飯に乗っけます。
  8. 宿題:カツ丼と、牛綴じ丼(牛玉丼とか開化丼ともいう)の作り方を考えなさい。

1999/03/28

食用油

自炊しているわたしの台所には、ええと、いま数えてみたら7種類ほどの食用油が並んでいます。自分でもちょっとびっくりした。もちろんそれぞれ、理由があって使い分けるためにあるんです。

キャノーラ油
日本語だと菜種油。昔の菜種油は臭くて食用には向かなかったそうですが、キャノーラ油として売っているものはわりとさらっと仕上がっています。で、大豆油が嫌いなのと値段が比較的安いという理由で、これをいわゆるサラダオイルとして利用しています。本当は綿実油の方が好きなんだけど。
胡麻油
基本的に香りづけ用。中華風の炒めものをするときに、サラダオイルと胡麻油を適当に混ぜて使うことが多いです。本当ならこの目的のためには太白を使いたい。
ヴァージンオリーヴオイル
オリーヴの実を絞っただけの油。他のところでも説明しましたが、油というよりは味つけ用のジュースです。香りを強調したいときには火に掛けて使うこともありますが。
ピュアオリーヴオイル
ヴァージンオイルを精製したもの。したがって、ふつうの料理油としてなんにでも使えます。あ、洋風の料理だけね。加熱するとかすかにオリーヴの香りが立つので、それが合わない料理には使えません。たとえば天ぷらとか(うげ)。
落花生油(ピーナツオイル)
なぜかイタリア料理食材のコーナーに売っていたのですが、中華料理で基本になっている植物油です。強く加熱するとピーナツの香りが出るので香りづけにも使えます。
ラード
動物性食材には植物油、植物性食材には動物油というのが中華の基本その2。チャーハンやモヤシ炒めにはこれと胡麻油を合わせて使います。
バター
食用油といっしょに扱っていいものかと思いますが、目玉焼きその他に使うこともできるし、逆にパンにヴァージンオイルを塗ることもありますから、まあいいでしょう。最近のマーガリンは料理に使えないので嫌い。

ここまで読んでこられた方はおわかりだと思いますが、わたしは食べものに関して健康を優先させたりしません。最優先にして唯一の基準は、旨いかどうか。ビタミンが足りないときにビタミンを含むものを食べるのは、それが旨いと感じるから(暑いときのビールと同じです)。露地栽培の野菜を好むのは、それが旨いから(というより、ハウス栽培だとまずすぎるから)。そしてオリーヴオイルをよく使うのは、旨い油だから。不飽和脂肪酸がどうとか(どういうアレでブームになったのか知りませんが)そんな理由は、考えたこともありません。
で、そのブームが発展して「グレープシードオイルの方が健康にはいい」ってことになったらしくてどこ行っても必ず見かけるんですが、それって旨いんですか。オリーヴオイルより旨ければ考えますが、そうじゃなかったらあほらしいかぎりです。オリーヴや落花生や胡麻はそのまま食べて旨いから絞った油も旨いのはわかるけど、ブドウの種って食べて旨いと思うか?(味わって食べたことないんで、旨いんだったら謝ります)

っ、と。もう一つ基準があった。それは(価値と比べて)安いこと。一般的な食用油の中でいちばん安いのは、たぶん大豆油です。見かけた中では、アメリカ産の輸入品で1000g198円というのがあった。特売の目玉じゃなくて、ずっとその価格で売っている中ではいちばん安いでしょう。ところが、これがまずい。値段以上にまずい。死ぬほどまずい。加熱するとしつこいというかくどいというか、そういう嫌な匂いがして、それだけで食欲が失せます。隣の家の換気扇から毎日これの臭いが漂ってきていた時期は、どうしてやろうかと思っていました。アルコールの次に嫌いな食べものかもしれない。
ところが、一般に売っているサラダオイルはこれと菜種油または綿実油をブレンドしたものが大半で、せっかくクセのない菜種油や綿実油の良さが無意味にされてしまっている。大豆油のクセを薄めるという意味では役に立っているのかもしれないけど。サラダオイルを加熱したときの独特の臭みって、心当たりありませんか。それはたぶん、大豆油の臭いです。某マンガでよく、「植物油は加熱すると独特の臭いがするのでサラダオイルでステーキを焼いてはいけない」云々とうんちくを垂れていますが、あれは植物油一般じゃなくて大豆油に限った話じゃないのかね。そのぐらいの区別はつけなさい。

太白。ああ、あこがれの太白。白絞油しらしめゆともいいますが、絞るときに加熱せず透明に仕上げた胡麻油のことです。これの味というか香りと旨さのバランスは、ふつうの胡麻油しか知らないと想像もできないかもしれない。オリーヴオイルならピュアとヴァージンの関係に似ていますが、ヴァージンオイルがいくらでも使えるのに対してふつうの胡麻油が一たらし以上は使えないことを考えると、太白の魅力がお判りだと思います。そのままドレッシングとかに使うと太白の香り(胡麻油の香りとも胡麻の香りとも違う)がするし、加熱してたとえばペペロンティーノに使うと胡麻油に近いがもっと上品な香りが漂い、オリーヴとはまったく違う、しかしそれに匹敵する味にさらに旨みが加わり。
なにやら過剰に思い入れしているようですが、ここんとこ使う機会がまったくないからかもしれない。高いんですよ。信頼しているブランドのものだと、500gで720円もする。それだけの価値は充分にあると思うのですが、値引きしているのも見かけないし、500gなんてすぐ使っちゃうだろうし。ヴァージンオイルでも1000g598円のを探して買っている身分では、とてもとても。
このように高級品なのですがその香りはあくまで上品なので、さっきと同じ某マンガで究極のユッケだかのレシピを説明したとき、「白絞の胡麻油で香りをつけ」とやらかしていたのがいかにでたらめだったか。高級だから匂いも強い、とでも思っていたんでしょうか。

チャーハンを、面倒なときにはサラダオイルで作ってしまうのですが、やはり可能な限りラードを使いたいものです。米というのは野菜の一種だから(ジャガイモだって地域によっては主食でしょう)、植物性食品には動物油という原則にかなったやり方でもあります。独特の、豚の脂身が焦げたときの香ばしさとしか説明しようのない香りがして、これがまた焦げたネギの香りによく合うんだ。チャーハンという食べものは、あるいは一般に炒めもの料理は、油の旨さを楽しむためにあるんだなあ、というのを実感できます。
世の中にはそもそも、食用油の個性やそれぞれの旨さを知らない、あるいは知ろうとしないで料理をしているひとがけっこう多いんじゃないかって気がしてきましたが、そんなことはないですよね、きっと。たぶん。食用油はひとつのカテゴリに含まれる食材であって、そういう意味でそれぞれが、牛ヒレ肉やライムジュースや生醤油や、もちろんバターなどと対等のものでもあり、味や旨みもあれば主役にもなれる。唐揚げのゆで汁やフライパンの潤滑剤じゃないんですよ。

1999/03/28

スタミナ源たれ

青森出身の人間と食べものの話をするときは、気をつけた方がいい。
ある一点に話がたどりつくと、相手がそこから一歩も動かなくなってしまうからだ。

この商品は焼き肉のたれの一種で、青森県あるいは東北地方北部にしか流通していないらしい。三河出身者が味噌煮込みを偏愛するごとく、青森出身者はスタミナ源たれを偏愛する。その偏愛ぶりは上記のとおりで、たれを語るときの青森人の目つきには、なにやら常軌を逸したものすら感じる。
ここまでくると、いささか疑問に思う。そこまで旨いものって、はたしていったい存在するのだろうか。試してみたくても青森に行く機会はなく、かといってまさかわざわざ焼き肉のたれだけを買いに東北新幹線に乗って行くわけにもいかない。そう思っていたところで青森出身の友人から、ということはつまり常軌を逸した勢いでその旨さを語ってくれた人物からなのだが、問題のブツを譲っていただいた。それも2本。(A.Kさんありがとう)。
「ホント旨いっすから、食ってみてくださいよぉ。うちが保証しますって」
こういう言い方をされると反発してみたくなるのが、わたしのサガである。これでよっぽど旨くなければ納得はするもんか、という気持ちにもなる。

さて、現物をとくと見てみる。すり下ろしリンゴが入っているのがウリらしいが、それだけならさして珍しくはない。味そのものはバランスがとれていて、甘すぎるということもない。塩分はやや多めかもしれないが、調味料なのだからそれはいい。旨み成分が勝ちすぎているということもない。要するに、焼き肉のたれとして良く出来ているが、味だけでここまで伝説めいた評価を受けているというわけではなさそうだ。
おそらく、香りがポイントなのだろう。独特の、知識がなければたぶん何に似ているとも表現できない香ばしさがこのたれにはある。記憶の片隅から掘り起こしてみると、これはニンニクが焦げたときの、あるいはなにがしかの方法でニンニクから抽出された香りだ。おそらく、そういう成分が加えられているのだと思う。ただ、普通にニンニクを炒めてもこの香りを確実に再現できるわけではないし、どういう炒め方をすればこの香りになるのか、たしかに経験はあるのだがわたしは把握できていない。
もっとも、これと似た香りを手に入れる方法は知っている。マルチャンの袋入りインスタントラーメン「昔ながらの中華そば 塩味」についてくる調味油には、これとほとんど同じ香りがつけられている。以前は同じマルチャンのカップ焼きそば「俺の塩」の調味油もほとんど同じものを使っていたはずだが、現在出回っている「俺の塩90」では変更されてしまったようで、悲しい。
というわけで、スタミナ源たれ中毒の青森人には「昔ながらの中華そば 塩味」を試してみることを強くお勧めする。塩味のインスタントラーメンが極端に嫌いではないかぎり、たぶん気に入るはずだ。

伝説の真偽は解き明かされた。スタミナ源たれはたしかに旨い。市販の焼き肉のたれとしては、あるいは肉野菜炒めや焼きうどんのためのソースとしては、最上等のひとつだと言える。忘れがたい味になるのは当然だろう。ところが、ただひとつだけ、まことに個人的な問題が残る。わたしは、焼き肉はともかく肉野菜炒めのたぐいを作るときには、塩や酒やガラスープを使って自分で味を組み立てないと気が済まないタチなのだ。特に意識しないかぎり、既製のたれを使うことはほとんどない。ところがこの味を覚えてしまったら、次に入手できる機会までは悶々として過ごし、入手できたら使い道に困る、という結果になりそうだ。いったい、どうしたものだろうか。
ところでこれは、「スタミナ源・たれ」と区切るのが正しいらしい。現物を見るまでずっと「スタミナ・源たれ」と発音していたのに(ときには「源たれ」とか言っていたのに)誰も修正してくれないんだもんな。

1999/12/20

アメリカンコーヒー

ボストン茶会事件について、忘れているひとはとりあえず中学の世界史の教科書でも参照してほしいが、つまりアメリカ独立戦争のきっかけのひとつである。すなわち、この事件を境にして、「アメリカ大陸に入植している英国人」は「アメリカ合州国人」になった。そもそも、入植者の英国人が紅茶中毒でなかったらこの事件は起きなかったわけだが、同じく英国人の紅茶中毒がアヘン戦争の遠因であったことを思い起こせば、米中二大国の歴史はともに紅茶によって大きく変化したのである。まあこれは余談だ。(余談ついでに、英国のアフタヌーンティーの習慣は中国南部の飲茶を移入したものらしい)。
さて、こうして誕生したアメリカ合州国人は、英国からの紅茶の輸入が停まったことと半分は意地もあり、紅茶を飲まずに済ませようと試みた。だが、紅茶の飲用が生活に染みついている元英国人にとって、これは難しい話である。代用品といってもコーヒーぐらいしかないが、それまでコーヒーを飲んだことがなかった合州国人たちは、どうすればいいのか見当もつかない。試行錯誤のあげく、「豆をこのぐらい焙煎してこのぐらいの荒さに挽いてこのぐらい煮出せば、紅茶と同じように楽しめる飲料が出来る」ことを発見したわけだが、当然というべきかなんと言うべきか出来上がったそのコーヒーは、浅い焙煎と粗挽きの豆とパーコレーターによって、香りこそ高く立つものの色が極端に薄い、紅茶と似た外見になっていたのだ。これが、アメリカンコーヒーの起源である。
というわけでわたしは、どういうわけか日本では「ブレンドコーヒーのお湯割り」ぐらいにしか思われていないアメリカンコーヒーの現状がひどく不満なのである。同じコーヒー豆を原料としたまったく別の飲みもの(紅茶と緑茶が違うように)、という認識はないのだろうか。ヨーロピアンスタイルで焙煎してしまったコーヒー豆をいくら薄く淹れたって、そりゃぜんぜん別のもんなんだよ。透き通った外見。やや酸味がかったブレンドで苦さをほとんど排除し、お茶代わりにいくらでも飲める軽い味わい。そして深く焙煎すれば消えてしまう爽やかな香り。アメリカンコーヒーとはそういう飲みものであって、ヨーロピアンスタイルを絶対の基準として云々すること自体が間違っているのだ。なのにどいつもこいつも、デニーズのコーヒーがまずいというし(目を見張るほど旨いとも言わんけどね)、すかいらーく系列に到ってはどろどろのエスプレッソみたいなもんしか出さなくなってしまった。どうしてくれる。贅沢を言っているわけではない、ただちょっと別の豆を用意して、それで淹れてくれれば済むのに。

1999/12/20